バルキング:汚泥が沈まないけど、キャリーオーバーしたらどうしよう?そんなお困りごとを工場排水.comは解決します。

沈殿槽で汚泥界面がとれず、キャリーオーバーが心配!

(1) お困りごとについて

 排水処理場をご担当されている方からそういった悩みをよく聞きます。
排水処理で広く使われている処理方式は活性汚泥法です。活性汚泥でのトラブルの多くは、曝気槽と沈殿槽で現れます。 沈殿槽のトラブルの代表格と言えば汚泥界面が高くなる『バルキング現象』です。
 このバルキング現象ですが、汚泥が沈まないために沈殿槽で汚泥界面がとれずキャリーオーバー(汚泥流出)を引き起こします。 キャリーオーバーは、排水処理場の運転管理をする上で日々悩まされる問題です。

(2) 汚泥の沈降性を調べてみよう!

 固液分離は活性汚泥のキーポイントです。汚泥の沈降性を知り、管理する指標として汚泥容量指標(SVI)があります。
 SVIは曝気槽内汚泥混合液を1Lメスシリンダーに入れ、30分間静置して汚泥を沈降させた場合に1gの汚泥が占める容積(mL)で表します。

写真:SVの風景


SVI=Sv/S
SVI:汚泥容量指標(mL/g)
Sv:30分間静置後の汚泥容積(mL/L)
S:MLSS濃度(g/L)

 正常な活性汚泥のSVIは 50~150 であり、200を超えるとバルキングと言われています。
 汚泥のバルキングの原因は、フロック(汚泥の塊)の構造やその組成に関すること、活性汚泥中の糸状微生物の過剰増殖、沈殿槽の水槽構造によるものがあります。
 

(3) 活性汚泥による有機物の分解

 多くの工場排水は、さまざまな形態の有機物を含んでいます。 昜生物分解基質は低分子量の有機物で、細胞内に直ちに代謝される有機物を言います。 昜生物分解性基質の代表例は、単糖類、低分子有機酸類、アミノ酸類、アルコール類などです。 活性汚泥に生物吸着した有機物のほとんどは、そのままでは細胞内代謝を受けない形になっています。 このような有機物は高分子物質で、多糖類、脂質、たんぱく質が最も一般的です。 高分子の基質は加水分解によって低分子化されます。

図:有機物の同化・異化


 次に食品工場の植物性油脂分解過程について説明します。 脂質は、リパーゼと呼ばれる酵素によってグリセリンと脂肪酸に加水分解されます。 加水分解した際に生成した脂肪酸類が多くなると細胞にゼリー質を持った微生物が増殖します。 この微生物の増殖によって汚泥の沈降性悪化と圧密性の悪化を招きます。

(4) 改善事例

 植物性油脂を含む食品工場排水では、油分除去を目的に加圧浮上処理を活性汚泥処理の前段に設置することがあります。 このフローの場合、加圧浮上処理で凝集不良があると、後段の活性汚泥に植物性油脂が流入し、 その影響でバルキングが生じることがあります。
 今回ご紹介する改善事例でも同様のことが生じており、運転管理に悩まされていました。 そこで微生物の初期吸着や緩衝能力に着目し、加圧浮上処理に活性汚泥を投入しました。 加圧浮上処理の段階で活性汚泥による安定したBOD除去、油分除去をすることが目的です。油脂を含んだ活性汚泥は浮きやすいため、加圧浮上により汚泥を浮上させ処理水と固液分離します。 浮上分離活性汚泥による処理水に油分はほとんど含まれないため、後段にある従来の活性汚泥はバルキングしにくい環境となります。 この方法により処理が安定し、バルキングが解消しました。

図:変更前フロー
図:変更後フロー

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